国土交通省が発表した2021年の基準地価は、住宅地や商業地など全用途の全国平均が前年比0.4%下がり、2年連続の下落となりました。新型コロナウイルス禍の下、全国的に下落する中で上昇した地点に目を向けると、海外の緩和マネー流入や在宅勤務による住環境の再評価というけん引力が浮かび上がります。商業地は、下落幅が広がり大阪圏が下落に転じた一方、東京圏は上昇を維持し、名古屋圏は上昇に転じました。地方圏もマイナスが拡大し、観光への依存度の高い地域でコロナ禍の影響が長引き観光頼みの構造を見直すことになりそうです。住宅地は、持ち直し前年全国的に下落したものの東京圏や名古屋圏が上昇に転じました。特徴的なのは前年都心部にとどまっていた東京圏の上昇地点が神奈川、埼玉、千葉の郊外に広がりました。都心のマンション価格の高止まり、テレワークの定着を見込んだ動きが要員でしょう。感染症や首都直下地震を考えれば過度な都心集中の緩和は望ましい風潮です。こうした地価の底堅さを支えるのが、不動産市場に流れ込む国内外の不動産マネーです。日本の不動産市場は、国債に比べた投資利回りが高く、海外マネーの流入が続きコロナ流行当初に急落した不動産投資信託(REIT)もコロナ前の水準を回復しました。ただコロナ対策に伴う世界的な金融緩和はいずれ縮小に向かい日本の不動産市場に流れ込む資金が絞られ投資対象の選別が厳しくなります。不動産マネーの動向に警戒が必要です。