2020年3月は、新型コロナショックにより、金融市場が混乱しました。金融資産よりも注目すべき資産が、あまり触れられることのない不動産です。数千万円、もしかすると数億円という評価額の不動産を保有している家計も多く、預金や株式、債券といった金融資産と比べて、家計のポートフォリオ・保有資産総額の計算に大きな影響を与えるからです。取引所で取引されている株式などの金融資産は、評価値が瞬時に変化します。一方、不動産の場合には、日々売買が成立しているわけではなく、鑑定価格や実際に取引のあったときに明らかになる取引価格で評価するほかありません。換金できる価格水準がわかりにくく、このため不動産価格は緩やかに変化する特徴があり、株価に遅行することが多いようです。不動産は、すぐに他の資産に入れ替えられない、もしくは売却に手間がかかるといった「非流動性資産」の一つです。思い立った時に、他の資産に入れ替えにくいからと言って、スピードの速い現代社会を生きる私たちは、その評価額の推移を無視してもよいというわけではないでしょう。不動産価格の転機は、金融資産よりも遅れて明らかになるだけに、「不動産は忘れたころにやってくる」という点は、意識しておきたいところです。