国土交通省が2019年7月1日時点の基準地価を公表しました。旺盛なオフィス需要や訪日客の増加などを背景に全国平均で2年連続の上昇となり、回復の裾野は地方にも広がっています。額面通りに受けとれば地価は堅調となりますが、足元の動向をみると上昇は鈍り始め、むしろ転換点が近いのではないでしょうか。地方圏は28年ぶりに商業地が上昇に転じているように、インバウンドの拡大が地価を押し上げています。しかし、これらはあくまで1年前と比べた地価の水準です。米中貿易戦争を受けた世界経済や企業業績の動向などは、十分に反映されているとは言い難いようです。基準地価や公示地価はその土地が更地だった場合の評価額で、実勢価格とはかなり異なります。すでに日本には850万戸近い空き家があり老朽化した物件が建つ場所では解体にかかる費用なども考えると相対的な土地の価値は低下します。10月の消費増税を控えて、今後も企業業績や所得環境の改善が続くのかどうか、力強い実需の支えがなければ、地価は早晩、調整局面に入る恐れがあります。